相続税の分野では相続人の税負担を低減するためのさまざまな特例が用意されています。
相続財産となった不動産に関する税制では、本記事で紹介する「空き家にかかる3,000万円控除特例」が有名です。
税金関係の特例は、自分で利用できるか等を能動的に考える必要があり、税務署など役所側から積極的に利用を働き掛けてくれる期待は持てません。
特例の存在を知らないだけで損をすることになりますし、利用条件が自らのケースに合うのかどうか見極める作業が必要です。
本記事で空き家にかかる3,000万円控除特例について詳しく知るとともに、利用についてはプロの税理士等にアドバイスを求めましょう。
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【目次(タップで移動できます)】
・空き家特例とは?(3,000万円控除)
・空き家特例利用時の税金試算
・空き家特例の利用に必要な書類
・【コラム】空き家特例ができた背景
【注意】相続による空き家特例は適用要件が多いです!
本特例は大変お得なものですが、適用を受けるための要件がとても多く、しかも細かいのが難点です。
特例は要件を満たさないと利用することができないので、自らのケースで利用できるか調べる必要がありますが、相続に不慣れな方では適切な判断が難しいです。
自分のケースで適用できるか、本特例を利用するのが本当にお得なのかといった、手間や知識の必要な判断作業は専門家にお任せするのが安全です。
下手に自分でやろうとしても知識不足からかえって損をする可能性もありますし、時間も浪費してしまいます。
最初から相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
相続は90日以内にまとめる必要があります
空き家の特例を利用できるかの前に、相続全体には時間的な制約があることを忘れてはいけません。
相続開始から90日以内には、相続を承認するか放棄するかを決定する必要があります。
相続放棄を選択する場合は、90日以内に家庭裁判所で手続きを行わないと以後は認められない可能性があります。
これらの判断をするためには、遺産の内容を詳しく調査する必要があり、かなりの時間を取られます。
これに加えて相続人は税金面で大きな損はないか、使える特例がないかも調べないといけません。
これらの細かい調査を相続に不慣れな素人が行っていては、それだけで期限の90日が過ぎてしまうかもしれません。
こうしたことからも、相続税および相続不動産に明るい税理士などの専門家を上手に活用していくといいでしょう。
不動産を含む相続の相談は当法人へ
当法人最大の特徴は、不動産を含む相続の解決を「窓口ひとつワンストップ」で行う部分です。
当法人には提携の税理士がおりますので、本特例の利用可否や相続税の計算等を窓口ひとつですべて対応できます。
「相続不動産の取り扱いに困っている」「売却を検討しているがどうすればいいかわからない」等のお悩みはぜひ当法人にご相談ください。
担当の「相続コーディネーター」にご相談頂ければ、あとは相続コーディネーターが適した専門家と連携して問題解決にあたります。
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空き家特例とは?(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
不動産を譲渡した際に発生する譲渡益(売却代金から各種経費などを控除したもの)には、不動産譲渡所得税がかかります。
譲渡益は税金の処理上は「譲渡所得」と呼ばれ、この金額が大きくなるほど税金の額が増え、逆に小さくなるほど税負担も小さくなります。
本記事のテーマである空き家特例は、上記の譲渡所得から特別に3,000万円を控除できる制度です。
空き家特例の適用要件
本特例の対象になる不動産をざっくりとイメージすると、「築50年以上経過した築古物件で、相続発生後に空き家となった物件であり、耐震化を施した物件」です。
耐震化が無理でも解体すれば土地が特例の対象となります。
このざっくりしたイメージをもって、実際の細かい適用要件を確認していきましょう。
※実際に相続した不動産で本特例が使えるかは事前に税理士等にご確認ください。
適用期間
本特例には利用できる期間があります。
適用期間は「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」です。
この期間内での売却が必要です。
たとえば、令和4年4月15日に相続の開始があった場合は、令和7年の12月31日までが適用期間となります。
居住者
居住者については、「相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと」という条件があります。
これは、対象不動産に被相続人が1人暮らししていた状態を意味します。
家族や親族が同居していた場合は、本特例は利用できません。
なお、被相続人が老人ホーム等に入所していたなどの事情がある場合でも、一定の要件を満たせば本条件を満たすことができます。
相続建物の建設時期
対象となる不動産は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(戸建て)である必要があります。
マンションなどの区分所有建物は対象となりません。
相続建物の利用法
相続後の対象不動産の扱いに関しても制限があります。
本特例を受けるには、相続時から譲渡時まで利用されない空き家でなければなりません。
途中で誰かに居住用として利用された、誰かに貸し付けられた、何らかの事業に用いられたなどの場合は対象外となります。
特例を利用する場合は、空き家のまま売却手続きを進めてください。
相続で建物と家屋を取得
本特例を利用したい人は、建物と土地をセットで相続することが条件です。
たとえば、長男が土地を、二男が建物を相続するような場合はどちらも本特例を利用することができません。
売却金額
売却金額にも要件があります。
本特例を利用するには、売却代金が1億円以下であることが条件です。
耐震基準
多くのケースでネックになると思われるのが耐震基準要件です。
「3.相続建物の建設時期」で昭和56年5月31日以前に建築された家屋が対象と解説しましたが、これは旧耐震基準に基づいた物件であることを示しています。
こうした古い基準で建てられた不動産を減らしていくことも本特例の目的でもあるため、建物付きで売る場合は譲渡前に現在の耐震基準に合わせないといけません。
耐震工事をする場合は当然その分の工事費用がかかります。
耐震工事をしない場合は、建物を解体して更地にすれば本特例を使えます(更地にする場合も解体費はかかります)。
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空き家特例が使えた場合の税金試算
本特例を利用できた場合、どれくらい税金がお得になるのかを確認してみましょう。
▼不動産の譲渡所得税の計算式
・譲渡所得額×税率
上記「譲渡所得額」は売却代金から取得費や譲渡費用といった経費を差し引いた金額です。
譲渡所得額の算出
ここでは対象不動産が4,000万円で売れたとし、経費として取得費(=購入額等)200万円、譲渡費用150万円とします。
この設定で計算すると「譲渡所得額=4,000万円-(200万円+150万円)=3,650万円」となります。
所有期間と税率
税率は不動産の所有期間によって変わりますが、被相続人の生前の所有期間と相続後の相続人の所有期間を合わせて20年を想定しましょう。
所有期間20年だと税率は長期譲渡所得の20%が適用されます。
不動産譲渡所得税の算出
これらの除法を計算式に当てはめると「3,650万円×20%=730万円」となり、不動産譲渡所得税が730万円だとわかります。
空き家特例の利用
空き家にかかる3,000万円の控除特例を利用すると「3,650万円-3,000万円(特例利用分
)=650万円」にまで減らすことができます。
すると不動産譲渡所得税額は「650万円×20%=130万円」となります。
特例を使えなかった場合と比較すると730万円-130万円=600万円もお得になる計算です。
※具体的な税額の算出については税理士にお尋ねください。
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空き家特例の利用に必要な書類
本特例を利用するには不動産譲渡所得税にかかる確定申告が必要です。
売却した年の翌年の2月16日から3月15日までに手続きをする必要があり、その際に以下のような書類が必要です。
▼必要書類
・対象不動産(土地と建物)の登記簿謄本
・対象不動産の売買契約書の写し
・被相続人居住用家屋等確認書
・耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付兼計算明細書)【土地・建物用】
上記「被相続人居住用家屋等確認書」は被相続人が対象不動産に一人で住んでいたことなどを証明するもので、市区町村の役所で取得します。
「耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書」は、耐震基準を満たして居ることを証明するもので、耐震基準確認をした建築士事務所などが発行します。
「譲渡所得の内訳書」は確定申告書に付属している書面で、数字を入れて計算をします。
個別ケースごとに提出書類が変わる可能性があるため、事前に税理士に確認するようにしてください。
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【コラム】空き家特例ができた背景
ここでは、本章のテーマとなっている空き家特例がなぜできたか、その背景や理由を解説していきます。
※あくまで下記は当サイトの意見です。参考までにお読みください。
空き家率を減らしたい
理由の一つは「国内の空き家を少しでも減らしたい」、「限られた国土を有効に利用したい」という国の考えがあると思われます。
事実、持ち主不明や適切に管理されていない空き家が問題となっています。
空き家でも勝手に解体することはできず、近隣に危険を生じさせたり、災害復旧の際などに土地の利用ができないなど、国レベルでも厄介な事情を生じさせていました。
そこで一定の条件が空き家を解体できるよう「空き家対策推進法」などが整備された経緯があります。
今回のテーマである空き家特例は、空き家問題の解消を税制面で後押しする作用があると考えられます。
【ポイント】
日本の国土は狭く、人が住める土地はさらに限られます。
狭い国土を有効に利用し、市場における不動産の流通を促進させ、国土の有効活用に繋げたいのでしょう。
5%ルールへの悪印象を回避したい←重要
もう一つの理由は、相続不動産特有の事情に配慮して国民負担を低減するためと考えられます。
先ほど、不動産譲渡所得税を計算する際には、取得費や譲渡費用を経費として譲渡所得から控除できるとお話ししました。
しかし、取得費(=自宅の購入額)は、過去の支出であり、相続時には購入額を証明する書類がないケースが多いです。
その場合、「売却代金×5%」を概算取得費として計算するのですが、この計算式では実際の支出よりも少なくなることが多く、国民の負担が大きくなります。
相続は被相続人(=故人)が購入した不動産であり、資料を紛失していることも多く概算取得費5%ルールの適用が多くなります。
空き家特例の3,000万円控除があれば、相続人の負担を大きく減らすことができるでしょう。
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【FAQ】空き家特例のよくある質問
空き家特例でよくある質問(FAQ)をまとめました。
Q1:ほかの特例とは併用できますか?
A:空き家特例は以下の特例と併用が可能です。
実際に併用できるか、その特例を利用するのがお得かは税理士に事前にご確認願います。
①マイホームの譲渡にかかる3,000万円の控除特例
自身の居住用不動産(=マイホーム)を譲渡した際にも、不動産譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。
上記特例は空き家特例と併用可能ですが、同一年内に併用する場合は両方の特例を合わせて3,000万円までが控除の上限となります。
②自己居住用財産の買換え特例
自宅を買い替えた場合に譲渡益が生じるケースで、一定の条件を満たすと課税が繰り延べられる特例があります。
住宅ローンが残る自宅を買い替えた際に生じる譲渡損失についても、一定の条件を満たすと翌年以降3年間は繰り越して控除計算できる特例があります。
空き家特例は上記の特例と併用可能です。
③小規模宅地の特例
小規模宅地の特例は一定の条件を満たす宅地につき、宅地の利用用途に応じて一定の相続税評価額を減額できる特例です。
空き家特例との併用が可能ですが、空き家特例の側の利用条件として被相続人が居住の用に供していたことが要件となります。
一方、小規模宅地の特例は宅地の利用用途としては、「特定居住用宅地等」に相当する宅地が対象となります。
特定居住用宅地となれば、最大330㎡まで相続税評価額を80%減額できます。
上記のように空き家特例はいくつかの特例と併用ができますが、相続財産譲渡時の取得費加算特例など併用できない特例もあるためご注意ください。
Q2:相続人が複数人いる場合はどうすればいいですか?
A:空き家特例は相続人ごとにそれぞれ利用できる制度です。
利用要件を満たせれば、相続人それぞれが最高3,000万円までの控除を受けられます。
ただし、空き家特例は居住用の家屋とその敷地を一緒に相続することが利用条件の一つとなっています。
たとえば、兄弟が共同相続人となるケースで、兄が土地を、弟が建物を相続で取得するとした場合は空き家特例の利用ができませんので注意してください。
まとめ:まずは空き家特例(3,000万円特別控除)が利用できるか専門家に確認しましょう
本特例を利用できれば、空き家状態の相続不動産を譲渡した際に譲渡所得から3,000万円を控除でき、税負担を大きく減らせます。
控除した結果、譲渡益が0円以下になれば税金の支払いが不要となるので、ぜひ知っておきたい特例です。
ただし、利用するための要件が多いうえに細かいため、素人による自己判断は危険です。
本特例を使えるか、ほかの特例との併用で損をしてしまうことはないかなど、専門家に確認してもらうといいでしょう。
当法人は相続不動産の扱いに強い団体であり、相続手続きから相続不動産の売却、税金の処理までワンストップで受け付けております。
相続に詳しい税理士とも連携しておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください(相談料無料)。
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本記事の監修者
税理士・行政書士
税理士法人アップパートナーズ税理士・行政書士
豊福 陽子
福岡県北九州市出身・同志社大学法学部卒。平成26年税理士登録。税理士法人アップパートナーズ相続税担当。最近の趣味は娘とゴルフ。帰りが遅くても猫が出迎えてくれるのが最近の癒し。